厳冬期 北八ヶ岳「東天狗岳(2643m)・西天狗岳(2646m)」

ゴール・・・。なのかも分からないが山小屋らしき建物が見えてきた。予定は狂ったが今日はここに泊まって明日早朝出発するか・・・などという考えも頭をちらつく。「とりあえずくつろぎたい」その一心であった。近づいていくと「唐沢鉱泉」と書いてあるのがわかる。暖かい風呂が頭に浮かんだ。地図でここ!とわかる場所についた安心感。東天狗山頂から人に出会っていない孤独からの開放が一瞬自分を安心させた。。しかし、、
小屋は閉鎖されていた。冬季休業。。正面入り口は堅く閉ざされている。暖かい風呂が頭からふっとんでいく。。一瞬期待してしまっただけにボディーブローを食らったようだった。「どこかに開いている扉はないか?」まわりのいくつかの扉を開けようとするがダメだ。小屋の周りも深い雪で移動にてこづる。
何分か二人で手分けして開いている扉がないか探したが、時間が過ぎていく一方なので決断を迫られる事になった。「頑張って渋の湯まで戻る 」or「ここでビバーク」の二択となった。いろいろな要素が頭を駆け巡る。
既に5時を過ぎているので日没は間近−−途中で暗くなって道を間違える事はないか?−−ヘッドランプの電池、予備は持ってきてるがこの寒さで減りが早くて最後まで持たないのでは?−−ビバークしたらしたで、ツエルト(簡易テント)のみ、シュラフない状態で寒さをしのげるのか? そうこうしているうちにUDAが結論をだした。「いけるところまでいこう」
同意し、ヘッドランプを装着し、ザックを担ぎ方角を確かめて再び斜面を登りはじめた。しかし、森林帯に入ると即座に暗さを感じた。しかも斜面が急に感じられる。自分の中で勝手に結論が出た。昼間の猛ラッセルで消耗した今の状態では体力的にもギリギリ。道に迷わない保障はない。やむを得ず雪面でビバークするよりは、小屋の軒下でビバークするべきだ。言葉が自然に出た。「やっぱりやめよう。暗いし迷わない保障もない。明るいうちにビバークの準備をして明日明るくなったら出発しよう。。」 UDAもおそらく同様の思いだったのだろう。「そうだな。その方がいいな。。」と頷いた。
小屋付近に戻り、まずは昨日泊まった宿に連絡する事にした。日帰り予定で帰ってない我々を遭難扱いして、届けを出されてしまうかも知れないと思ったからだ。自分は携帯を車に置いてきたのでUDAの携帯でかけるが、つながらない。アンテナは3本立っているがかからない。あせって何度もかけ直す。しかしつながらない。後で分かった事だがアンテナが立っていても氷点下の低温状態では携帯電話がうまく動作しない事が多いらしい。寒さでの電池の減りを心配してカイロで温めながらかけて、ようやく電話がつながった。「ラッセルで日没前の下山が難しいのでビバークします。」
とりあえず遭難で騒がれる心配が無くなりまずは夕飯を食べる事にした。昼食べる予定だったチキンラーメンをコッヘルで沸かした湯にぶちこみ食べる。胃に沁み込む温かさだった。
To be Continued...

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